カラーコラム 11


最終更新日:2007年9月20日






静岡県の昆虫(9)
カバマダラ

北條 篤史
 今年もカバマダラが静岡県東部と西部で多数見られました。カバマダラが静岡県にやってきたのは1965年9月に水窪町でした。静岡昆虫同好会の会誌「駿河の昆虫」によりますと、当日は台風の翌日晴天であったと報告されてます。これは、台風に運ばれて飛んできた迷蝶です。その後の静岡県へのカバマダラの飛来は1970年9月に浜松市天竜川堤防、1973年8月下旬に大東町、1974年9月に静岡市清水区興津、1983年10月に静岡市葵区西草深で記録されてます。ここまでの記録はすべて採集にしろ目撃にしろ見つかったのは 1頭だけです。このことは、前に台風が来ていたか分かりませんが一過性の迷蝶として飛来したものだと考えられます。その後、1990年代に入ってもカバマダラは静岡県にやってきます。1997年9月以降に西部の竜洋町、磐田市鮫島、1998年には浜松市田尻町、中田島町などでカバマダラの成虫と卵、幼虫が多数見つかってます。さらに、2000年に入っては沼津市香貫山、2001年韮山町でやはり、成虫、卵、幼虫が複数見つかってます。そして今年(2005年)8月以降に西部の大須賀町、浅羽町で多数の成虫が見られました。また、トウワタから卵が多数見つかり、ガガイモからは幼虫が見つかりました。さらに、東部の函南町から多数の成虫が見られました。

 そこで、注目すべき現象を述べますと1980年代までのカバマダラの飛来(記録)は単発の1頭だけでした。しかし、1997年以降、今年の記録はすべて複数でさらに卵や幼虫までが複数記録されてます。大須賀町の発生地の方に伺ったら、「この蝶は6月過ぎにたくさんここで飛んでいた」とおっしゃっていた。そうすると、10月下旬に多数見られたカバマダラは2度から3度ここで発生を繰り返していたのではないかと想像をします。  1997年以降、地球温暖化によって南方系の蝶が静岡でも世代を繰り返せる環境になったのかと思いますが、それほど自然界は人間の考えるほど単純ではないことも覚悟してますので、今後のカバマダラの調査が楽しみです。

 終わりに、カバマダラはどんな蝶かご紹介します。写真の成虫は翅の裏ですが、最近、みなさんの家の花壇や公園でよく見られるツマグロヒョウモンというオレンジ色に黒点のある蝶に良く似ています。フウセントウワタという生け花に使う植物にも飛んできます。  写真は磐田市鮫島にて入交 修氏により撮影されたものてす。


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登録日:2007年1月3日


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